生命あふれる、人々の営み―日本人の心がここにある
田沼 武能 作品展「1950年代・日本人の暮らし」
展示期間 1992年11月3日(火)〜11月29日(日)
品番

L0019

価格 700円(税込)
この作品展では、田沼氏が1950年代の東京の世相・風俗や、当時の日本の縮図ともいえる筑豊炭田での人々の営みを捉えた作品を中心に、約100点を展示いたします。
1950年代といえば、長かった太平洋戦争による傷痕から立ち上がろうと、人々が懸命に生きた時代です。復興が急ピッチで進められつつも物資はまだまだ乏しく、決して豊かとはいえない時代でしたが、人々の顔は一様に明るく、どの顔も皆、生きる喜びと生命力に満ち溢れています。当時20代の田沼氏は、そうした時代の人々の暮らしを「若さ故の馬力」ともいえる勢いと、瑞々しい視点で丹念に捉えています。
そこに展開するのは、復興しつつある街並みを往来する人々、エネルギッシュな祭り、下町の路地、街頭テレビを見るために集まった大勢の群衆。そして、「お化け煙突」をはじめとする現在では失われてしまった様々な情景が、当時の息吹を伝えてきます。
今回は、物質的に豊かになるにつれ、今を生きる多くの日本人が過去に忘れてきた、大切なものに出会える作品展です。
田沼氏が写真家として本格的に活動を開始したのは、ちょうど50年代初頭のことでした。当時は、ようやく国そのものが戦災から立ち直りつつあり、物はなくとも人々はバイタリティに満ち溢れていた時代です。縁台将棋や井戸端会議、子供たちには紙芝居といったように、街のいたる所にコミュニケーションの場が存在し、そこでは大人も子供も屈託なく輝いていました。写真家として駆け出しの田沼氏は、そうした彼らの生命感豊かな営みを、若若しい感性で意欲的に捉えストレートに写真に打ち出すことに成功しました。氏の被写体への情熱はとどまらず、今日の世界情勢を踏まえながら、現在もなお撮り続けています。
田沼氏といえば、世界中の子供たちを生き生きと捉えることでつとに有名ですが、その根底に流れる「人を温かく見つめ、その生命力を写真に焼き付ける」という姿勢は、すでにこの時期に確立されていたといえるかも知れません。50年代、氏が見つめ、撮り続けた人々は皆、現代の日本人が忘れつつある生の輝きに満ちているからです。「時短」や、「本当のゆとり」といったことがようやく見直されつつある昨今、今回の作品展は、強い説得力を持って私たちに語りかけてきます。
(展示紹介より)
田沼武能(たぬまたけよし)
1929年東京浅草生まれ。49年、東京写真工業専門学校卒業、サン・ニュース・フォトス社に入社し木村伊兵衛に師事。51年「芸術新潮」嘱託を経て、65年、アメリカのタイム・ライフ社と契約。その後72年に独立。世界の子供の活きいきとした姿を初めとする人物写真や、風景写真などで新境地を開き、幅広いジャンルでの活躍が評価される。写真集に「すばらしい子供たち」「武蔵野」「わが心の残像」「東京の戦後」など多数。また、著書に「未知の国、すばらしい人たち」「アンデスの旅」などがある。現在も世界各国で、その土地の様子やそこに生きる人々の姿を捉えるなど、精力的な活動を展開している。

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