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木洩れ日に誘われて


佐々木崑 作品展 「国木田独歩の歩いた武蔵野」



 JCIIフォトサロンでは、10月28日(火)から11月30日(日)まで、佐々木崑作品展 「国木田独歩の歩いた武蔵野」 を開催いたします。

 昆虫など身近ないきものをとらえ続ける写真家の佐々木氏は、1960年に上京後まもなく、武蔵野に惹かれて東村山に住居を構えました。そして武蔵野に関する資料や案内書などを頼りに撮影をはじめましたが、なかでも1898年に発表され、後に短編集として出版された国木田独歩著『武蔵野』(岩波書店)の影響は多大なものでした。本を片手に西へ東へとひたすら歩き、分かれ道にぶつかったら、「君の杖を立ててその倒れた方に往きたまえ。」という独歩の言葉どおり気の向くままに歩みをすすめて、目に飛び込んでくる景色を夢中でファインダーの中におさめました。

 しかし撮影後、プリントにして改めて見た氏は、「独歩も私も同じ道を歩いているはずなのに、なぜこんなにも差が生じてしまうのか。」と、悩みを抱きました。文章にできて写真にできないものがあるように、写真にできて文章にできないものもある……独歩が描く『武蔵野』のニュアンスを大切にしながらも、その世界をよりいっそう広げようとした氏の作品からは、写真表現の可能性を感じることができるでしょう。

 今回の作品展では、そうした1965年頃の武蔵野を記録したモノクロ写真作品約70点を展示します。人気のない林道に降り注ぐ木洩れ日、路傍にひっそりと佇む地蔵、白化粧をした雪中の平林寺、強い日差しの中ですれ違う農夫、川越の町並や、そこで生活する人々など、まさに独歩の『武蔵野』を、写真を通して我々も歩いているかのようです。また現在では見ることのできないのどかな農村風景や、うっそうとしげる広葉樹の林などは、約40年前の武蔵野の記録としても価値のある作品です。




● 佐々木 崑 (ささき こん)

 1918年中国・青島生まれ。1958年商業写真スタジオを大阪に開設、グラフ誌、週刊誌等に作品を発表。1960年に上京、フリーカメラマンとなる。1966年から1979年まで『アサヒカメラ』で「小さい生命」、1983年から1991年まで同誌で「新・小さい生命」を連載。現在、日本自然科学写真協会会長、日本写真家協会会員、日本写真協会会員。1972年日本写真協会年度賞、1992年勳四等瑞宝章、2001年日本写真協会功労賞など多数受賞。主な写真集は、『小さい生命』、『生命の誕生』、『モルフェー』、『新・小さい生命』、『人は何故麻薬に溺れるのか』など多数。

 


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