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林 忠彦 作品展

「小説のふるさと」


明るい南伊豆の景色が展く天城峠(川端康成『伊豆の踊子』) © 林忠彦作品研究室



 JCIIフォトサロンでは、来る2012年9月4日(火)〜9月30日(日)まで、林忠彦作品展「小説のふるさと」を開催いたします。
 
 林氏は、1918年に山口県徳山市(現在の山口県周南市)に生まれます。家業は徳山一の名写真館で、幼い頃から写真が身近にあり、暗室が遊び場であったといいます。東京に上京し、オリエンタル写真学校卒業後は東京工芸社に入社し、戦時中は北京で華北広報写真協会結成に参加しました。北京で敗戦を迎えた後、東京に戻り、相次いで創刊された「カストリ雑誌」を中心に写真を発表し、一躍人気写真家となりました。あまりにも有名な「文士」シリーズの、銀座の酒場「ルパン」で写された太宰治や、床一面に紙屑が散らばった部屋で執筆中の坂口安吾ら「無頼派」の作家たちの作品で注目を浴びました。

 今回の作品展では、「小説のふるさと」と題して、1957年に発行された林氏の初めての写真集『小説のふるさと』より、川端康成の『伊豆の踊り子』、志賀直哉の『暗夜行路』、三島由紀夫の『潮騒』など、日本を代表する文豪たちの書いた名作の舞台を写した作品群をご覧いただきます。

 文士シリーズが撮られたのが終戦直後の1946年からで、その丁度10年後に「小説のふるさと」は撮られました。1956年の一年間『婦人公論』に連載され、上記の他に石坂洋二郎『若い人』、梅崎春生『桜島』、椎名麟三『美しい女』、壺井栄『二十四の瞳』、谷崎潤一郎『月と狂言師』など、12の文学作品を取り上げ、舞台となった土地を訪ねて撮影しています。その当時、「男を撮れば林忠彦」と謳われ、文士シリーズを撮り終えていた氏が力を入れた仕事ということもあって、小説のあらすじに忠実になるよう、見た人がイメージを損なわず違和感無く入り込めるような風景やモデルを写しだし、より一層小説のイメージを作りだすのに一役買っています。

 林氏は北京で報道写真家として暮らし、この頃にジャーナリスティックな目でドキュメンタリーとして撮るスタイルを確立していました。この作品でも、日本の昔からの叙情的な景色に深い洞察の目を向け、小説の世界を追いながらも心情のままに捉えようとし、ジャーナリスティックな感性に溶け込ませていく林氏の意気込みが画面から溢れだします。瞬間の表情の変化をも見逃さないポートレートの技術とあいまって、氏の個性がいかんなく発揮されています。

 林氏は、「実際に仕事に入ってみて、私は、すぐれた小説のもつイメージを損うことを恐れないではおれなかった。カメラの写実性というものが、静止したその外貌を通してどれだけ文芸作品のもつ”世界“へ接近し得るだろうかという懼れが、終始私をとらえたのである。」と『小説のふるさと』で語っています。このように、確立された世界をもつ文学作品を扱う困難なテーマを、生涯第一線で活躍し続けた林忠彦氏が情感豊かに描きあげた作品群となっています。



林 忠彦(はやし ただひこ)

1918年(大正7)山口県徳山市(現在の山口県周南市)生まれ。37年、オリエンタル写真学校卒業。同年、東京工藝社入社。42年、北京に渡り、華北広報写真協会設立に同協会理事として参加。46年に帰国し、フリーカメラマンとして活動を再開。文士シリーズで太宰治や織田作之助、坂口安吾ら無頼派の作品で注目を浴びる。また全盛期のカストリ雑誌を含めて20を超える雑誌の写真ページを手掛け、社会派として活躍する。1953年、二科会写真部創立に参加。86年、脳出血で倒れ、厳しい闘病生活に入る。この間、東海道を生涯最後のテーマに選び、四男の義勝氏と車椅子で撮影に取り組む。90年9月に写真集『東海道』を出版。12月、逝去(享年72歳)。
主な写真集に、『日本の作家109人』、『日本の経営者100人』、『日本の画家108人』、『カストリ時代』、『日本の家元』、『文士の時代』など多数。



タイトル

林忠彦作品展 「小説のふるさと」

開催期間

2012年9月4日(火)〜9月30日(日)

展示内容

「小説のふるさと」と題し、1957年に発行された林氏の初めての写真集『小説のふるさと』より、川端康成の『伊豆の踊り子』、志賀直哉の『暗夜行路』、三島由紀夫の『潮騒』など、日本を代表する文豪たちの書いた名作の舞台を写した作品群をご覧いただく。

林氏は北京で報道写真家として暮らし、この頃にジャーナリスティックな目でドキュメンタリーとして撮るスタイルを確立していた。この作品でも、日本の昔からの叙情的な景色に深い洞察の目を向け、小説の世界を追いながらも心情のままに捉えようとし、ジャーナリスティックな感性に溶け込ませていく林氏の意気込みが画面から溢れだしている。瞬間の表情の変化をも見逃さないポートレートの技術とあいまって、氏の個性がいかんなく発揮されている。

確立された世界をもつ文学作品を扱う困難なテーマを、生涯第一線で活躍し続けた林忠彦氏が情感豊かに描きあげた作品約80点(全作品モノクロ)を展示する。

展示点数

約80点(全作品モノクロ)

図録販売

今回展示される作品を収めた図録を制作し、フォトサロン受付にて販売します。または通信販売もご利用いただけます。

開館時間

10:00〜17:00

休館日

毎週月曜日(ただし、祝日の場合は開館)

入館料

無料

所在地

102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル1階

交通機関

  • 東京メトロ半蔵門線半蔵門駅下車 4 番出入口より徒歩 1 分
  • 東京メトロ有楽町線麹町駅下車 3 番出入口より 徒歩 8 分
  • 都営バス「都03 グリーンライン(四谷駅=半蔵門=日比谷=銀座四=晴海埠頭)」半蔵門停留所下車 徒歩 4 分

* 駐車場はございませんので、お車でのご来館はご遠慮くださいませ。
* JR東京駅からは、東京メトロ
丸の内線東京駅→大手町駅にて半蔵門線に乗り換えると便利です。

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