写真展

JTB旧蔵ストックフォトから見る日本 「示威と宣揚 戦中の国策写真 1」

開催期間:2025年7月1日(火)2025年7月27日(日)
撮影:内閣情報部 
掲載:「犬も応召」『写真週報』66号(1939年5月24日)

砲弾雨中の敵陣をくぐり抜けての通信連絡や広漠たる平原の夜を護る警備など軍犬の任務はなかなか重いものです。物いはぬ戦士として、かうした軍犬の活躍は数々の陣中美談とともに今事変史の可憐な一頁を飾つてゐるほどです。五月十一日浅草区松清町[現・台東区西浅草]伊藤松藏さんの愛犬『三郎クン』は軍犬として晴れの任務を果すため同僚犬廿数頭の見送りを受け勇躍出征しました。喜びに溢れた三郎クンは見送りの同僚[犬]に元気なご挨拶をしました。
ぼくはいよいよ戦地に行けるんだ。日頃の訓練が物をいふときが来た。任務についた上は皆さんの名誉を傷けないやう一死奉公を誓ふ。広漠たる大陸を護る僕等の役目はこれからだと思ふ。銃後の諸君は忍耐強く技を磨き、一日も早く大陸でお目にかゝれることをのぞんで止まない。(抄)
撮影:内閣情報部 
掲載:「先生の飛行機作りもお国のため」『写真週報』111号(1940年4月10日)

子供たちの先生に先づ航空知識を養つてもらひ、先生を通して次の時代の小国民が空への認識を深めるやうにと、こんど文部省は小学校や中等学校の手工の時間に模型の飛行機やグライダーの作り方と飛ばせ方とを教へることに決定しました。全国の師範学校の先生たちを集めて講習会を開き、先生たちは各府県に帰って児童の手工指導に当るわけです。
飛行機の構造とか形とかについて正確な知識を得た子供達は、飛行についてのむづかしい理論を自然と覚えるやうになり、日本の航空文化はだんだんと高められてゆきます。模型飛行機教育の奨励は航空日本の将来に貢献するばかりでなく、理科と手工の綜合教育から発明の才を培養するといふ一石二鳥の教育方法でありませう。(抄)

 JCIIフォトサロンでは、来る2025年7月1日(火)~7月27日(日)まで、「JTB旧蔵ストックフォトから見る日本『示威と宣揚 戦中の国策写真 1』」を開催いたします。

 戦後80年にあたり、弊館所蔵のJTB旧蔵ストックフォト原板の中から見出された戦中の国策写真を、鮮明なニュープリント(60点、すべてモノクロ)でご覧いただきます。軍用犬の出征(1939年)、失明軍人教習所(1940年)、興亜馬事大会に隣席する昭和天皇(1941年)など軍事に関わるテーマや、銃後強調週間(1939年)、学校での模型飛行機づくり(1940年)、鉄屑回収(1941年)など銃後生活をテーマにした内容もあります。

 これらは、日中戦争勃発を受けて1938年に対内外写真宣伝の官庁代行機関として設立された「写真協会」が構築したストックフォトの一部です。ご覧いただく写真群は、国内大衆向けグラフ誌『写真週報』(内閣情報部、1938年創刊)、戦時写真家への啓発誌『報道写真』(写真協会出版部、1941年創刊)、1940年代刊行の外国向け宣伝グラフ誌、そして、海外配信によって外国誌などに掲載されていることが調査により判明しました。戦時下国民の意識誘導が明らかな掲載キャプションは、何気ないスナップショットと思われる一葉も周到な準備の上に撮影されたことを物語っています。内外発信を目的に撮影された写真は国策の視覚化であり、戦時を考える貴重な史料といえましょう。

★展示に合わせて、7月13日(日)に本展をキュレーションした写真史研究・写真評論家の白山眞理氏(前・日本カメラ財団調査研究部長)を講師に、トークイベントを開催いたします。お申込みを受付中です。

*本展は、弊館に寄贈されたJTBモノクロネガ原板に残されていた「写真協会」分の調査研究により構成。1938年の設立以降に蓄積された写真協会のストックフォト原板は、1945年の敗戦後に日本交通公社(JTB)に吸収された。同時に、JTBは戦前に外客誘致宣伝を担っていた国際観光協会(1931年設立)のストックフォト原板も受け継いでいる。1977年にJTBは写真協会分の原板の大半を国立公文書館へ移管し(2014年より日本写真保存センター蔵)、2017年度にはその他のネガ原板全てを弊館へ寄贈。本展は2021年の「国際観光写真にみる1930年代」展に続く2回目で、この原板の整理と調査研究は継続中。

キュレーション:白山 眞理(しらやま まり)
写真史研究、写真評論。学術博士。前・日本カメラ財団調査研究部長。主なキュレーションは「名取洋之助と日本工房作品展」(JCIIフォトサロン、2003年)、「戦争と平和」(IZU PHOTO MUSEUM、2015 年)、「名取洋之助と土門拳」(土門拳記念館、2023年)など。主な著書は、『名取洋之助と日本工房 1931-45』(共編、岩波書店、2006年)、『〈報道写真〉と戦争』(吉川弘文館、2014年)、『京都大学人文科学研究所所蔵 華北交通写真資料集成』(共編、国書刊行会、2016年)など。主な受賞は、日本写真芸術学会学術賞(2003年)、日本写真学会学術賞(2014年)、日本写真協会賞学芸賞(2015年)など。


タイトル

JTB旧蔵ストックフォトから見る日本「示威と宣揚 戦中の国策写真 1」

開催期間

2025年7月1日(火)~7月27日(日)

展示内容

写真宣伝の官庁代行機関として設立された「写真協会」が構築したストックフォト原板(JCII蔵)より、軍用犬の出征(1939年)、興亜馬事大会に隣席する昭和天皇(1941年)、学校での模型飛行機づくり(1940年)などを、鮮明なニュープリントでご覧いただく。これらは、国内大衆向けグラフ誌『写真週報』(内閣情報部、1938年創刊)、戦時写真家への啓発誌『報道写真』(写真協会出版部、1941年創刊)、1940年代刊行の外国向け宣伝グラフ誌や外国誌などに掲載された。内外発信のために示威と宣揚を目的に撮影された国策の視覚化であり、戦時を考える貴重な写真史料である。

展示点数

60点(全てモノクロ)

図録販売

今回展示される作品を収めた図録を制作し、フォトサロン受付にて販売します。または通信販売もご利用いただけます。

開館時間

10:00~17:00

休館日

毎週月曜日

入館料

無料

所在地:102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル

交通機関

  • railway東京メトロ◎半蔵門線半蔵門駅下車 4 番出入口より徒歩 1 分
  • railway東京メトロ◎有楽町線麹町駅下車 3 番出入口より 徒歩 8 分
  • bus都営バス「都03 (四谷駅 - 半蔵門 - 日比谷 - 銀座四 - 晴海埠頭)」
  • bus都営バス「宿75 (新宿駅西口 - 東京女子医大前 - 四谷駅前 - 半蔵門 - 三宅坂)」
    半蔵門停留所下車 徒歩 4 分

  • 駐車場はございませんので、お車でのご来館はご遠慮ください。
  • 日本カメラ博物館とJCIIフォトサロンの入り口は異なりますのでご注意ください。
  • 日本カメラ博物館へご来館の際は、お足もとが不自由な旨ご連絡いただければ、エレベーターにてご案内いたします。
  • JR東京駅からは、railway東京メトロ丸の内線東京駅→大手町駅にて半蔵門線に乗り換えると便利です。