写真展

「ステレオ写真に浮かび上がる幕末・明治の日本 Part2 G.A.B. & 横山松三郎 & Others」

開催期間:2023年8月1日(火)2023年9月3日(日)
伊豆下田 柿崎弁天島と釣人
No.5522. A Japanese Fisherman.
撮影:G.A.B. 1860年代 鶏卵紙
嘉永7年(1854)3月27日、吉田松陰は金子重輔と連れ立ち、この弁天島より小舟でペリー提督が率いる旗艦ポーハタン号に漕ぎ着けて密航の懇願をしている。

 JCIIフォトサロンでは、古写真シリーズの44回目として、来る2023年8月1日(火)から9月3日(日)まで、「ステレオ写真に浮かび上がる幕末・明治の日本 Part2 G.A.B. & 横山松三郎 & Others」を開催いたします。今年2月に開催したステレオ写真の古写真展の第2弾となります。当館では、幕末期から明治前期に日本を撮影したステレオ写真を200枚以上所蔵しており、その中から今回は、下岡蓮杖が幕末期に撮影したとされる“Phot G.A.B.”と台紙に記されたステレオ写真を中心に、横山松三郎撮影作品と、5種類の撮影者不詳の作品“Others”をご紹介いたします。

 人間の右目と左目は少し離れて顔についているため、私たちがものを見ている時、右目と左目では同じものが微妙に違って見えています。この左右の違いから脳が奥行きを認識し、立体的な像として私たちはものを見ることができています。ステレオ写真とは、この左右の違い「両眼視差」を利用し、人間の目と同じように左右に少し離れた位置から写した2枚の写真を並べて台紙に貼ったものです。これを左右の目で別々に見ることによって、写真の中に立体感と奥行きが生じます。当時はステレオスコープと呼ばれる2枚のレンズを使ったビュアーも販売されていました。

 今回展示するG.A.B.と記されたステレオ写真の多くは、撮影地として「下関」や「神奈川」と題されていますが、調べてみるとこれらは実際には蓮杖の出身地である伊豆下田の風景でした。下田は安政元年(1854)年から5年間、横浜よりも先に開港地となった場所です。なぜ下田の風景が「下関」や「神奈川」と題されているのかなど、G.A.B.にはまだまだ不明な点がありますが、とても希少な幕末期の下田の風景を私たちに伝えてくれます。

 また、当館では蓮杖の一番弟子であった横山松三郎が撮影した6枚のガラスのステレオ写真を所蔵しています。その中には明治2年から翌年(1869-1870)にかけて日本で初めて撮影された日光東照宮の写真が2点あり、これは戊辰戦争や廃仏毀釈の影響で破損や焼失を心配した蓮杖の思考から撮影するに至ったと言われています。この他に、明治初期の上野、向島、亀戸天神などの東京の風景も写されています。そして、“Others”とした5種類の撮影者不詳の作品には、幕末から明治初期の長崎、横浜、大阪の風景、そして力士の姿が写されています。展示会場では簡易なビュアーを受付にてお貸ししますので、幕末・明治の日本の様子を立体画像でお楽しみいただけます。

★この展示に合わせて、2023年8月26日(土)に古写真収集家の石黒敬章氏をお招きし、日本カメラ博物館の古写真研究員・井桜直美とのトークショーを開催いたします。ぜひご参加下さい。


下岡 蓮杖(しもおか れんじょう)
文政6年(1823)2月12日伊豆下田生まれ。鵜飼玉川や上野彦馬と並び、日本の営業写真師の開祖の一人。文久2年(1862)横浜野毛に写真館を開設、翌年店舗を横浜弁天通りに移転。多くの弟子に恵まれ、横山松三郎、臼井秀三郎、鈴木真一、江崎礼二、中島待乳ら明治時代の高名写真家をも輩出した。写真館の成功を受け、乗合馬車事業や乳牛飼育、コーヒー店やビリヤード場などの新事業にも手を出すが失敗する。明治9年(1876)には写真館を廃業し、東京・浅草に移住。晩年は、写真館の背景に使う書割を描くことを専門とした。大正3年(1914)3月3日逝去。享年92歳。

横山 松三郎(よこやま まつさぶろう)
天保9年(1838)10月10日千島列島の択捉島(えとろふとう)生まれ。嘉永5年(1852)箱館の呉服商堺屋八右衛門の店に丁稚奉公に入る。元治元年(1864)、横浜で下岡蓮杖の門弟となり、写真術と石版術を学ぶ。慶応4年(1868)東京両国に写真館を開業後、すぐに上野不忍池に移り「通天楼」と名付け、写真・洋画の製作と実験、門弟の指導にあたった。明治2年から明治3年(1869-1870)に日光山を撮影し、その写真数百枚を徳川慶喜に献上。明治4年(1871)には蜷川式胤の命で荒廃していく江戸城を撮影し、翌年の近畿地方の社寺宝物調査「壬申検査」にも随行し撮影を行った。明治9年(1876)陸軍士官学校の教官となり、明治11年(1878)の気球浮揚実験の際、気球より空中撮影を試みた。明治14年(1881)写真と油絵を融合させた独自の技法「写真油絵」を完成。明治17年(1884)10月15日逝去。享年46歳。


タイトル

「ステレオ写真に浮かび上がる幕末・明治の日本 Part2 G.A.B. & 横山松三郎 & Others」

開催期間

2023年8月1日(火)~9月3日(日)

展示内容

人間の右目と左目は少し離れて顔についているため、私たちがものを見ている時、右目と左目では同じものが微妙に違って見えており、この左右の違いから脳が奥行きを認識し、立体的な像として私たちはものを見ている。ステレオ写真とは、この左右の違い「両眼視差」を利用し、人間の目と同じように左右に少し離れた位置から写した2枚の写真を左右の目で別々に見ることによって、立体感と奥行きがあるように見える写真のこと。今年2月に開催したステレオ写真の展示の第2弾となる今回は、当館所蔵の幕末期から明治前期に日本を撮影したステレオ写真の中から、下岡蓮杖が幕末期に下田で撮影したとされる“Phot G.A.B.”と台紙に記された作品を中心に、蓮杖の一番弟子であった横山松三郎撮影によるガラスの作品(日光東照宮、明治初期の東京の風景)と、“Others”とした5種類の撮影者不詳の作品(幕末から明治初期の長崎・横浜・大阪の風景、力士の姿)をご紹介する。会場では簡易ビュアーも貸し出しし、立体画像で幕末・明治の日本をお楽しみ頂く。

展示点数

52点

図録販売

今回展示される作品を収めた図録を制作し、フォトサロン受付にて販売します。または通信販売もご利用いただけます。

図録はこちら

開館時間

10:00~17:00

休館日

毎週月曜日(祝・祭日の場合は開館)

入館料

無料

日本カメラ博物館YouTube公式チャンネル

明治初年から明治18年以前に東京の名所を撮影した写真がまとめられている、当館所蔵の「大日本東京寫眞名所一覧表」と題された2冊の写真帖をベースに、古地図や幕末・明治の写真おり交ぜながら井桜直美古写真研究員が現在の様子と比べて紹介するシリーズ「東京百景」などは、日本カメラ博物館YouTube公式チャンネルでご覧になれます。

所在地:102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル

交通機関

  • railway東京メトロ◎半蔵門線半蔵門駅下車 4 番出入口より徒歩 1 分
  • railway東京メトロ◎有楽町線麹町駅下車 3 番出入口より 徒歩 8 分
  • bus都営バス「都03 (四谷駅 - 半蔵門 - 日比谷 - 銀座四 - 晴海埠頭)」
  • bus都営バス「宿75 (新宿駅西口 - 東京女子医大前 - 四谷駅前 - 半蔵門 - 三宅坂)」
    半蔵門停留所下車 徒歩 4 分

  • 駐車場はございませんので、お車でのご来館はご遠慮ください。
  • 日本カメラ博物館とJCIIフォトサロンの入り口は異なりますのでご注意ください。
  • 日本カメラ博物館へご来館の際は、お足もとが不自由な旨ご連絡いただければ、エレベーターにてご案内いたします。
  • JR東京駅からは、railway東京メトロ丸の内線東京駅→大手町駅にて半蔵門線に乗り換えると便利です。