はじめに

スマートフォンのカメラ機能

最初に、スマートフォン(携帯電話、タブレット)に入っているカメラ機能をみてみましょう。

スマートフォンのカメラ機能の機械部分には「カメラモジュール」と呼ばれる部品が組み込まれています。その「モジュール」の基本部分にはレンズと撮像素子が入っています。
そのレンズと撮像素子の中間部分は完全にさえぎられていて、余計な光を入れないようになっている構造は、まさにカメラそのものです。
スマートフォンのカメラモジュールは、撮影に必要な機能が限られたもので構成されているので、モジュール自体を小型軽量にすることができ、その結果、本体を薄くできるようになっています。

撮像素子

デジタルカメラは、「固体撮像素子」で写真を撮影します。
固体撮像素子は光の情報をキャッチする単体の「受光素子」の集合体で、それぞれ並んでいる素子の数を「画素数」と呼びます。
スマートフォンのカメラとデジタルカメラの画素数が同じ場合に、一部に例外はありますが、両者の最も大きな違いは撮像素子の大きさです。では、撮像素子の大きさが異なり、同じ画素数だと、その写りは同じなのでしょうか。

たとえば「1,600 万画素」の撮像素子の場合、スマートフォンのモジュールに組み込まれた4.4×3.3ミリなどの撮像素子に1,600 万の画素が並んでいるとすると、カメラでは7.1×5.4 ミリ(2.3 型コンパクトカメラ)、13.2×8.8 ミリ(1.0 型)、17×13 ミリ(マイクロフォーサーズ)、23.5×15.6 ミリ(APS-C)、36×24 ミリ(フルサイズ)の撮像素子に、それぞれ1,600 万の画素が並んでいるのです。
小さい面積の撮像素子の中に同じ数の素子が並べられているほうが精密に思えますが、これを1,600万の素子をバケツの数、撮像素子全体の大きさを部屋の広さとして、画像の情報を水の量と、例えてみましょう。狭い部屋に1,600 万個のバケツを並べるには、バケツは小さくなりますが、逆に部屋が大きい場合にはバケツを大きくすることができるので、水の量を増やせます。つまり、より多くの光(=情報量)をとり込めるのです。
現在では、撮像素子や画像処理回路の能力が向上してきていることもあり、撮像面積の狭い、スマートフォンなどでも良い画質が得られるようになりました。
しかし、もともと十分に明るい場所での撮影なら、小さな撮像素子のスマートフォンやコンパクトカメラでもきれいに写真を撮影できますが、暗い場所などの撮影では、元の画像の情報量(水の量)が大きく反映されるため、結果的には大きな撮像素子を使用したカメラを使うほうが、より良質な画像が得られることになるのです。

レンズ

スマートフォンのカメラもデジタルカメラも、それぞれの用途に合ったレンズが装備されており、基本的に同じような仕組みでできています。
スマートフォンなどでは、画面を電気的に拡大(トリミング)する“デジタルズーム” とも呼ばれる方式が採用されていることが多く、この場合は同じ画素数の一部分を切り取るので、画質が低下することは避けられません。一部には複数のレンズを備えている機種もあり、望遠、広角、接写、さらにはズームを可能としたアダプターレンズも製造されています。
一方、多くのデジタルカメラでは、被写体をレンズの作用で光学的に広角にしたり、拡大(光学ズームやレンズ交換)して撮像素子で記録するため、良質な画像を得られます。またカメラのレンズには、広い範囲で光の量を調節できる「絞り」が入っており、ピントの合う範囲を狭めたり、拡大したりと、さまざまな表現にも応用することができます。
「絞り」については後の項目で詳しく触れることにします。

シャッター

ほとんどのカメラでは物理的に光を遮断・通過させるシャッターが装備されています。そのため、シャッターを切ると「パシャッ」というシャッター音が聞こえます。
スマートフォンなどで聞こえるシャッター音は電気的に作られた音であり、実際にシャッターが作動した音ではありません。
スマートフォンと一部のデジタルカメラでは、撮像素子に流れる電流をオン・オフすることで機械的なシャッターの代わりとする「電子シャッター機能」を装備しています。とくに本格的なミラーレスカメラや一眼レフカメラの電子シャッターモードは、シャッター音がでないために、音楽会や舞台などの撮影でよく使われています。
電子シャッターは機械的な動作機構のないこと、小型にできるといった利点があります。一方で、撮像素子にCMOS を使用している場合には、電気が通じた部分から順次記録を開始するために、動きの速いものを撮影すると、開始から終了までの間に移動する被写体が歪んで写ってしまう「ローリングシャッター現象」が発生しやすくなります。最近はCMOS 撮像素子の技術改良により、データ転送速度が非常に早くなり目立たなくなりましたが、状況によっては不自然な写真になることがあります。なお、これに似た現象は、機械式のフォーカルプレンシャッターを用いたカメラでも発生することがあります。

カメラでできること

ここからは、写真を撮る専用の道具である「カメラ」について考えてみましょう。
写真撮影に特化した機能をもつ機械であるカメラで、できることは何でしょう?
大きく分けると、カメラにはフィルムを使うものと、デジタルの2 種類に分類されます。現在は撮影にはほとんどデジタルカメラが使われています。デジタルカメラは主に下の4 種類に分類できます。

  1. コンパクトカメラ
  2. 透視ファインダーカメラ
  3. ミラーレス(ノンレフレックス)カメラ
  4. 一眼レフカメラ

それぞれのカメラには構造的な特徴があり、目的に応じて使い分けられています。
それらの中から、性能、機能、価格など自分の撮影目的に合ったカメラを探しだすことが大切です。そして、自分の目的にかなったカメラを見つけることから、“カメラの魔法” が始まるのです。

コンパクトカメラ

名前のとおりコンパクト(小型)なカメラの総称で、外観はミラーレスカメラに似たものや、一眼レフカメラに似た形状のものもありますが、レンズが固着されていて、レンズ一体型カメラともいわれます。
レンズ交換ができない代わりに、ズームレンズが装着されたカメラが多く、広角から超望遠撮影までができる高倍率のズームレンズを装備したものや、接写が可能な「顕微鏡モード」を装備したもののほか、ズームができないかわりに画質にこだわった広角などの単焦点レンズを装着したものなどがあります。
また、工事現場や水中で使用できるアウトドア用カメラなどもあります。

透視ファインダーカメラ

コンパクトカメラに似た形状ですが、カメラ背面にある液晶モニターのほかにレンズを使用した光学ファインダーを装備しています。このタイプのカメラでは、レンズが固定式のものとレンズ交換式のものが製造されています。
この構造のカメラはフィルムカメラの時代から多くの製品が製造されてきたため、カメラとしては標準的な形状といってもよいかもしれません。
なかには光学ファインダーと電子ビューファインダーを切り替えられるカメラもあります。

ミラーレスカメラ

「一眼レフカメラ」から反射(レフレックス)ミラーを取り除いた構造なので「ミラーレスカメラ」や「ノンレフレックスカメラ」と呼ばれています。
一眼レフカメラは光学的なファインダースクリーンを見て、構図やピントを合わせますが、ミラーレスカメラでは電子ビューファインダー(EVF)や背面の液晶モニターを見てピントを合わせます。
ミラーレスカメラでは、このEVF か背面液晶モニターで撮影画像の一部分を電気的に高倍率に拡大して見ることができるので、精密なピント合わせが行えます。
またミラーレスカメラはレンズ交換式なので、撮影目的に応じていろいろなレンズを交換装着して使用することが可能です。特に一眼レフとは異なり、ミラーやプリズムなどの光学ファインダー機構が省略された分だけボディを薄く・小型に仕上げることができます。
電子ビューファインダーを着脱できる機種もあり、デジタルならではのレンズ交換式カメラといえます。

一眼レフカメラ

一眼レフは「撮影レンズから入ってきた画像をカメラ内部の鏡とプリズムで反射(レフレックス)させて、ファインダースクリーンと撮像面に結像させるカメラ」です。
目的に応じて各種交換レンズを装着して使用でき、ファインダースクリーンに光学的に画像を結像させている光学像なので、レンズの向こう側とファインダーで見えていることの時間的な差のないリアルタイムな画像といえるでしょう。また、ファインダーに液晶を使わないので消費電力が少ないともいえます。
なお一眼レフカメラでは、背面の液晶ディスプレーを使ってアングルの変更やピント合わせができる「ライブビュー」というモードがあります。これはミラーをアップして、撮影画像を背面の液晶モニターで見るので、この状態ではミラーレスカメラとして機能しているといえます。一部の機種では、ミラーレスカメラと同様に背面液晶モニターでタッチAF、タッチシャッターが使えるほか、機械シャッターを使用しないサイレントシャッターモードなども使えます。